国境

境界線を引いた昔
それを取り合った昔
今のこと

広い大地を分かつもの

国と国との境はいったいなんのため?
ほかのものを排除する?
そことここでは別の場所
なぜ?

同じ大地が広がって、道はそれでも続くのに
こえればそこは別の国、文化も何も違ってる

それは目には見えないけれど、確かにそこにあるという
あるものであると信じ込む

誰かの利欲のためだけど

私のために開く地と
私を拒む受け入れない

海にもあるって知っている?
誰が引いたか知らないし
ドコにあるのかわからない


さぁ行こう国境をこえて

私は世界を見に行くの





ここから先は、違う国。




「………。」

ヒュ――――――

 風が、流れていく。

 荒野。

 砂が、誇りのように舞い上がり、流れていく。

 少女は、頭から足まですっぽりと覆うコートを着ていて、それにフード。顔は見えない。うつむいている。


「………」
 閉じられた口は、何も言わない。


ここから先は、違う国――――


「―――何者だ?」
 声がした。

 少女は、ふっと気がついたように振舞っただけだ。

「……お前?」
 正面から馬を走らせてきた青年は、答えない少女にいぶかしんだ。

「……。」
 少女はうつむいたまま。

「………?」
 青年は、声をかけただけに立ち去れない。

「「………」」

ヒュ―――――

 いっそうむなしく、風が吹きぬける。


「―――あなたは、この先から来たの?」
「……? ああ」
 小さな問いかけに答えながら、青年は馬を下りた。
「この先は?」
「ギスカだ」
「―――違う国」
「………?」
「ここは、国境」
「は?」
 ――ここが?

 ここは、荒野の真ん中。岩山と、岩石と、丘が連なる。空は青く、雲の流れは速い。足下の地面は、ドコまでも続いているかのように長く、絶え間ない。

「ここから先は、違う国」
 一歩踏み出せば。

「そんなもの、地図上の決まりだろう?」
「でも、それが本当。」
「本当って……」
「だって、昔も、今も、この土地を求めて人は争うのでしょう」
「争、い…」
「誰の物でもないこの広い大地を人は求め奪い合う。今ですら」
「―――」
 青年は、目を伏せた。――――思い出すのは、あの日、海に沈んだ王女。そう、目の前の少女と変わらないだろう年頃で―――

「ここから先は違う国」
「……」
「だから、私は、」

「――――王子!」

「―――!!?」
 第三者の声に青年は驚き、そしてしまったというように顔をしかめた。

「いきなり走り去らないで下さい!!」
「すまん」
 やって来た護衛の怒りを静めていて、一瞬あの少女から目を離した。いや、声をかけられた時には振り返っていた。

「いったいここで何を………」
「?」
 声が小さくなるので、いぶかしんだ。
「あの少女は?」
「ぁあ、………」
 そして振り返って絶句した。

ヒュ――――

 少女の背は、地平線に向かっていた。

「…………。」
 唖然として見送る青年。
 同じくらい不思議そうにする護衛。


「………『ここから先は、違う国』か」
「なんですかそれは?」
「いや」
 不思議がる護衛をなだめて、青年は国に帰った。




『だから、私は、先に進むのをためらった。だけど、世界を見てみたい』



ここから先は、違う国――――




Free Will