ウィッチ


「頼む! 俺にかけられた呪いを解いてくれ!!」
「あなたにかけられた呪い? っていうと、あなたの父親が私のお母様に、未亡人だったけどおなかの中にいた私のために生きていたにもかかわらず、それでもいい! とかなんとか毎日のようにつきまとい、引っ付き、手紙の山を送り、豪華な宝石を送り、毎日のように求婚していていい加減ウザくなったお母様があの男にかけた呪いの事?」
「う……それのことだ!!」
 ちなみにその男とはこの国の王様だったりする。そして、今その魔女の娘(同じく魔女)レルのもとを外にいる護衛と共に訪れているのは息子ラディ王子だ。
「なんで俺までその呪いとやらを受けなければならないんだ!!」
「ああ。子々孫々悩み困り後悔し、あげくくたばれってのがお母様の望みなのね」
「………」
「それくらい、しつこかったね。きっと」
「………」
 声も出ない王子。
「で、他に用事がないなら。帰れ」
「―――違う! だから呪いを解け!」
「なぜ私が?」
「なぜ……?」
 絶句する王子。
「問題ないじゃない」
 昼間、女性に触れると蛙になるくらい。
「夜も呪いを適応はしなかった分、子々孫々まで呪われろって事ね」
「そういう問題じゃない」
「あらそうなの」
 そう言って、魔女は家の扉を閉じ、
ガッシ!!
「早く解け!!」
「え〜嫌よ面倒だもの」
「俺は困る」
「あんたが困ろうとも私は困らないし」
「正論家かお前!!」
「あら、大変そうね。頑張って」
「人事かよ!」
「人事だもの」
「〜〜〜〜あのなぁ!」
「報酬は?」
「は?」
「まさか、ただって言うの?」



「――――おい」
「何よ」
「これで満足か!」
 どーーんと、魔女のテーブルの上には金塊。
「……そうねぇ(もう少しぼった食ってもいいか)」
「何を考えた何を」
「ぇえ? 何も」
「早く呪いを解け!!!」
「用意がかかるから、半年後にまた来て」
「長いわ!」
「じゃ、追加料金」
「この性悪魔女!」
「あら、ほめ言葉ね。おほほ……で、どうするの?」
「〜〜〜〜〜」



「早くしろ!!」
 ばーんと、魔女によって金塊の片付けられたテーブルの上に今度は宝石。
「浪費ぐせ激しいわね」
「お前のせいだよ!」
「まぁ、人のせいにするの? あなたそれでも一国の王子?」
「この際お前の評価はどうでもいい! なんでもいいから呪いを解け!!」
「うわ、面倒」
「なんだと?」
「いえ何も(しょうがないわねぇ〜)」

 パッと取り出した魔女の杖を掲げる。黒い服と黒い長い髪が舞い上がる。

『開け魔女界の門! この男を地獄に落とっ』

「ちょーーーっとまてぇ!!!?」
「何よ」
 ごろごろと、いかにもいかにもな感じで暗雲が立ち込めてきていた。
「何をする気だ何を」
 軽く本気で、王子は魔女の首を絞めにかかった。
「何って、呪いを解くんじゃないの?」
「なんで疑問系なんだ!!? ってお前『地獄に落とせ』って言わなかったか!?」
「『せ』なんて言ってないじゃない」
「俺が途中で止めたからなぁ!!!」
 ぜぇぜぇと息をしつつ、王子は脱力した。
「ちょっとーー大丈夫――」
 なんて棒読みなんだ。
「とにかく! 真面目にやれ!!」
「疲れるのよね」
「なんだって!?」
「何も」
 あーーあと手を開いて、魔女はしょうがないと言わんばかりだ。

『暗黒を司る女神よ!』

「だからまてぇ!」
「何よ」
「さっきと違うぞ」
「気にしないでよ」
「気になるだろう!?」
「うるさいわよ、外野」
「俺は当事者だ!!!」
「細かいわね。神経質?」
「このっ」
「はい黙って黙って。あ、そこ座ったら?」
「〜〜〜〜」

 王子を椅子に座らせて、魔女は何か考え込んでいるようだった。

「「……」」
 その目が、かっと見開かれる。

『わが呼び声に答えよ!!』

「それを考えていたのかよ!?」
 かろうじて? 椅子から落ちながら王子は叫んだ。
「――え? 何?」
「なんで毎回毎回違う事を言ってんだよ!!」
「え? 前振りは必要でしょう」
「いらないものかよ!!?」
「それなりに雰囲気を出すために」
「いらねぇよ!」
「あら、これも大切なのよ。それっぽく見えるでしょう?」
「見かけだけかよ!?」
「ふふっ小娘だからって馬鹿にするものには報復を」
「………」
 黒い、腹の中と笑みが。
「とにかく先に進めろ」
「あんたが邪魔するんだけど?」
「〜〜〜」
 王子は、何かを悟った。
「う〜〜ん。次は何がいいかしら?」
「……」

『この世を作る十三の元素よ!』

「……」

『今、我の前に集まれ!』

「―――王子っ!?」
「うわっ」
 ドガァンと、いきなり入ってきた兵士。
「何事だ!?」
「それが、陛下がまた城出を……」
「父上が? まさかまた昼から逃走に? 母上がいないのをいいことに……」
「とにかく、城にお戻りを」
「おう!」
 そういって王子は、あろうことか魔女の家を出た。
「――あ、そうだ!」
 と、王子が家を振り返ってみると……
 なんと、閉じられた扉に張り紙が一つ。

『本日弊店(へいてん)。またのご利用を。なお、料金はそのつどいただきます』


「ちょっと待ちやがれぇーーー!!!?」







「いいカモ見つけちゃった」
 魔女は家の中で微笑んだ。












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